TRPG 配布シナリオ

  ◆アリアンロッドRPG 人食い魔女とお菓子の家◆

使用規約

・このシナリオは、自由にご使用ください。プレイ環境に応じて、シナリオ改変して頂いても構いません。

・使用報告は任意ですが、感想やリプレイを頂けたら嬉しいです。

・「TRPG『シナリオ名』質問」というタイトルでメールを頂ければ、遅くなるかもしれませんが返信致します。




■シナリオデータ

プレイヤー人数:3人〜5人
キャラクターレベル:2〜3(ギルド未結成)
プレイ時間:3〜4時間
使用ルールブック:基本ルールブック、エネミーガイド、スキルガイド、アイテムガイド




■ストーリー

 水の都“クラン=ベル”の町外れの森に、美食家の妖魔・カーナミが住み着いていた。カーナミのごちそうは人間で、お菓子の家で空腹の人間を誘い出し、閉じ込めて食らっている。
 PC達は神殿から依頼を受けた冒険者や閉じ込められた人間となり、妖魔を討伐し、お菓子の家から脱出すればシナリオクリアとなる。




■キャラクター作成

 コンストラクション、クイックスタートは問わない。PC1と2はレギュレーションが決まっているが、PC1が「グレーテルに気に入られる」PC2が「グレーテルに嫌われる」立ち位置であれば、ハンドアウト等は改変しても構わない。グレーテルはPC1の種族、ヘンゼルはPC2の種族となる。
 このシナリオでは、「PC達は初対面であり、森ないしお菓子の家内部で合流する」「エンディングにてギルドを組む」ことを想定している。そのため、ギルドスキルは適応されない。
 プレイヤー人数が5人以下の場合は、番号の若い順から採用すること。




■ハンドアウト

PC1(PC2と種族違いのPC推奨。希望がなければエルダナーン推奨)
 空腹で倒れそうになった君はを迎え入れてくれたのは、夢のようなお菓子の家と、一組の兄妹。
 無邪気な妹・グレーテルは「ずっとここにいて、妹(もしくは弟)になればいい」と言う。けれど、光のない目をした兄・ヘンゼルは「ここから逃げろ」と君に言った。
 何日も経ったある日、少女(もしくは少年)がお菓子の家を訪れた。

PC2(PC1と種族違いのPC推奨。希望がなければフィルボル推奨)
 クラン=ベルで両親とメイド達と一緒に暮らす君は、ある日の朝、街の外へ散歩に行って、不思議なお菓子の家を発見し、中に入ってしまう。
 なにがなんだかわからない君に、中にいた少女・グレーテルは「ヘンゼルを奪いに来たのか」と疑い、敵意を向けた。
 気付けば君は牢屋に閉じ込められている。さて、どうやって脱出しよう。

PC3  君は神殿から「クラン=ベル郊外における行方不明者多発の原因究明と解決」の依頼を受けた。どうやら、クラン=ベル郊外の森で行方不明となる旅人が多いらしい。

PC4  君はクラン=ベルの昔話「人食い魔女とお菓子の家」に興味と不審を抱いた。やけに具体的な記述のあるコレは、本当にただの伝承か? 気になった君は、確かめることにした。

PC5  君は旅人だ。クラン=ベルに滞在していると、富豪から「病がちな我が子に、旅の話を聞かせてやってほしい」という依頼があった。しかし、なんと子どもは「魔女の森」に外出してしまったらしい。両親は君に「我が子を連れ戻してほしい」と依頼してきた。




●今回予告

 女神アエマが守りし街に昔から伝わるお伽話。
 「甘い香りに誘われるな 人食い魔女に食われるぞ!」
 幼い子どもと病弱な少女(or少年)が囚われたとき、闇の昔話が白日にさらされる。
  アリアンロッド 『人食い魔女とお菓子の家』
 冒険の舞台が君を待つ。




オープニングフェイズ

●シーン1:ヘンゼルとグレーテル  シーンプレイヤー:PC1

◆描写1
 PC1は、おなかがすいてすいて倒れそうだった。
 甘い香りに誘われて迷い込んでしまった森、奥へ奥へと足を踏み入れた先でみつけたお菓子の家。  美味しそうだ、と思った瞬間には、PC1は家の「中」にいた。
 見上げればショコラーデの天井、壁と床には人の形を模したレープクーヘン。パイの机とマカロンの椅子……あふれかえるお菓子達。
 夢のような部屋には、背の高い女性と小さな少年?がいた。2人共、粗末な服を着ている。

◆解説1
 部屋の中にいるのは、ヘンゼルとグレーテル。
 グレーテルは、行き倒れていたPC1への共感と好意を「自分の家族だと思い込む」という方法で示そうとする。グレーテルの主観が歪んでいることを強調し、明らかに種族違いのヘンゼルを兄だと思い込んで執着している異常性へ繋げる。

◆パーソナルデータ/グレーテル
 20代女性。高い残虐性を秘めた無垢な子ども。
 小麦色の三つ編みおさげ髪、草原色の瞳、簡素なエプロンドレス。年齢のわりに動作や言葉遣いが幼く無邪気。
 幼少期に兄と共に口減らしで捨てられ、お菓子の家に誘い込まれた。ヘンゼルがカーナミに食べられたことで邪悪化して以降、カーナミに従順に仕えている。
 お菓子の家に迷い込んだ人間に毒菓子をふるまい、「帰り道を忘れた(カーナミの魔力に染められた)」頃を見計らってレテ川に連れていくだけの簡単なお仕事。
 あるとき、鴨をつれて迷い込んだ旅人に優しくされて「自分にやさしくしてくれた = 兄のヘンゼルだ!」と誤認。カーナミにおねだりして生かしてもらい、幸せライフを送っている。
 本心では「ヘンゼルと一緒にかえるおうち」を欲している。

◆パーソナルデータ/ヘンゼル
 30代男性。ダウナー系無口。
 短い茶髪にヘーゼル色の瞳、木綿のシャツとズボン。瞳と表情筋が死んでおり、グレーテルに関することのみ感情が動く。
 天才ポーションマスター。アロマ作りも得意。神聖な水で作成したキャンディを富豪に売りつけるべく旅をしていたらスリにあって、空腹ゆえにお菓子の家に囚われた。
 どう見ても邪悪化して魔女の小間使いになっている少女が哀れでちょっとやさしくしたら兄にされた。正直勘弁してほしかったが、「ヘンゼル」になるか魔女に食われるか…で、今までのすべてを捨ててグレーテルのためだけのヘンゼルになると決めた。命あってのプライドです。
 今では無邪気にヘンゼルを慕うグレーテルにほだされており、彼女の幸せを心から願っている。

◆セリフ1
▼グレーテル
「見て、ヘンゼル! この子、わたしとおんなじで●●だわ!」
「わたしはグレーテル。あなたはだぁれ?」
「(PC1の名前を聞いて)そう、(PC1)、(PC1)。わたしたちお揃いね! きっと(PC1)は、わたしたちの妹(もしくは弟)だわ!」

◆描写2
 無邪気に笑うグレーテルは、エプロンドレスの前ポケットから、ハンカチに包んだクーヘンをPCに差し出す。
 光のない目で2人を見ていたヘンゼルは、グレーテルに気付かれないように首を横に振った。「食べるな」というように。

◆解説2
 クーヘン(クッキー)を食べるかどうかで、微妙に描写が変わる。GMの裁量次第では「グレーテルクーヘン」効果(ミドルフェイズのシーン2に詳細)を適応させても構わない。
 食べたら、一瞬だけ部屋の奥に扉が見えて、「わたしが焼いたのよ!もっと作ってあげる!」とグレーテルが笑う。
 食べないと、「クーヘンはきらい?なら、マドレーヌを作ってあげる!」とグレーテルが笑う。
 どちらにせよ、グレーテルは次のお菓子を製作するべく姿を消す(GM情報:奥へ続く扉は判定に成功しないと発見できないため、PC1からは姿が消えたように見える)。
 残ったヘンゼルは、PC1に「ヘンゼルボンボン×10」を渡す。

◆セリフ2
▼グレーテル
「このお菓子を食べ続けたら、あなたはわたしたちの可愛い妹(もしくは弟)よ、(PC1)」
▼ヘンゼル
「この部屋の菓子も、グレーテルが差し出す菓子も、食べてはいけない。ここから出られなくなってしまうから。
 どうしても耐えられなくなってしまったときだけ、これを食べて我慢しなさい。そしてこの部屋でじっとして、もし外への扉が見えたなら、すぐに逃げなさい」
「ここは人食い魔女の家。囚われてしまう前に逃げるんだよ……」

◆結末
 淡々と告げたヘンゼルもグレーテルを追うように姿を消す。PC1の手に残ったのは、グレーテルのくれたクーヘンとヘンゼルのくれたボンボン。一体、どういうことなのだろうか?



●シーン2:クラン=ベル昔話「人食い魔女とお菓子の家」  シーンプレイヤー:PC4

◆描写
 “クラン=ベル”は、エリンディル中央を流れるネルス川流域に集まるパリス同盟都市のひとつであり、豊穣の神アエマや水の精霊ウンディーネへの信仰厚い水の街だ。
 人々は己の足の代わりにゴンドラで移動し、船の上に市がたつ。そんなクラン=ベルの図書館にPC4はいた。
 資料を繰っていたPC4の目が、クラン=ベル地方に伝わる伝承の一説で止まる。
  “屋根は固めたSchokolade(ショコラーデ)
   壁は焼き立てのLebkuchen(レープクーヘン)
   窓は透き通るZucker(ツッカー)
   甘い香りで誘って 魔女は毒菓子の家に子どもを閉じ込めた”
 よくある昔話だが、何故か、気になってしまう。

◆解説
 「お菓子の家を作ったのは人食い魔女で、理由は入ってきた子どもを食べるため」「森に行った子どもは捨てられた子(=帰る家を失った子ども)」だということがわかる。

◆セリフ
▼司書
「深い森は、昔は口減らしのために利用されていたそうです。その名残が昔話になったのでしょうが……『菓子の家』『人食い魔女』という具体的な記述となっている興味深いですね」
「往々にして、伝承には真実が隠されている。もしかすると、今でもその森には魔女が住んでいて、子どもをさらっては食べているのやもしれませんね」

◆結末
 気になるならば、確かめればいい。君は昔話のモデルになった森に行くことにした。



●シーン3:神殿からの依頼  シーンプレイヤー:PC3

◆描写
 君はクラン=ベルの神殿で依頼を受けることにした。
 依頼内容は「クラン=ベル郊外における行方不明者多発の原因究明と解決」。明らかに荷が重い。

◆解説
 空腹の人間に強く作用する魅了魔法のため主に貧民がおびき寄せられていたが、食べられ過ぎて数が減ったため、旅人が罠にかかるようになった。
 クラン=ベル側としては、「クラン=ベルに行こうとしたら行方が知れなくなる」という噂が流布すると経済などに影響が出るため、神殿が調査に乗り出した。
 PC3ひとりに提示する報酬は100G、エンディングで実際に渡す全員分(5人を想定)の報酬は300G。

◆セリフ
▼神官
「クラン=ベルでは、ここ何年か行方不明者が多発しています。被害者は貧民が多数を占めていたため、木の実を探しに行って野獣に襲われたのだろうとされて問題視されていなかったのですが……クラン=ベルに行ったはずの旅人が辿り着けていないといった訴えが増えており、見過ごせなくなりました」
「行方が知れなくなっているのは、おそらく、郊外にある森の中。昔から、クラン=ベルの昔話などの舞台になってきたような古い森です。もしかしたら、歳経た野獣や妖魔が住み着いているのかもしれません」
「原因究明と解決までを依頼内容としておりますが、おひとりには荷が重いことは承知しております。調査にあたり、協力を頼める人材がいれば協力を要請して下さい。その方々のぶんも、適切な報酬をお支払いすると約束致します」
「依頼報酬は、(PC3)さんおひとりで100G。人数が増えた場合は、全員分の適正価格を一括でお渡しし、それを自由に分配して頂く方式にさせて頂きます」

◆結末
  明らかにひとりでは荷が重いが、声をかけるような冒険者仲間もいない。とりあえず一度、教えられた森に行ってみよう。



●シーン4:有閑奥様からの依頼  シーンプレイヤー:PC5

◆描写
 君は旅の途中にクラン=ベルに寄った。旅の疲れを癒していると、街の富豪から屋敷に招かれる。  時刻は昼過ぎ、もうすぐアフタヌーンティの時間だ。

◆解説
 PC2の母親が、病弱な我が子のために旅人を招くシーン。
 PC2がどうやってメイド達の目をかいくぐって郊外の森まで行ったのかは、PL達の想像力に任せる。
 PC5が森に行くのを渋った場合は、適当に依頼報酬を約束しても構わない。

◆セリフ
▼奥様&メイド
奥様「わたくしには、(PC2)という子がおりますの。病がちで、滅多に外に出ることが叶わぬ子です。どうか、お茶をしながら、あの子に旅のお話を聞かせてやって下さいませんか?」
メイド「奥様!(PC2)さまがいらっしゃいません!」
   「“森へ行ってきます”の書置きひとつが寝室に!」
奥様「まあ、なんてこと! (PC5)さま、どうかあの子を連れ戻して下さいませ!」

◆結末
 厄介なことに巻き込まれてしまった。仕方がないから郊外の森に行こう。



●シーン5:グレーテルの嫉妬  シーンプレイヤー:PC2、(PC1)

◆描写
 クラン=ベルに、PC2の生家はあった。
 病弱なPC2は滅多に外へは出られないが、その日の朝は、珍しく体調がよかった。散歩に行きたいが、家族に言えば止められるのは目に見えている。黙って出かけることにした。
 散歩の場所に選んだのはクラン=ベルの外に広がる“魔女の森”。クラン=ベルの子どもなら誰でも聞いたことがある昔話「人食い魔女」のモデルになった森だ。
 しばらく歩いていると、どこからか甘い香りがして、誘われるように森の奥へ奥へ進むと、お菓子の家を見つけた。
 不思議に思って扉に触れた次の瞬間には、PC2はお菓子の家の「中」にいた。
 部屋の中にいたのは、PC1と、エプロンドレスを着てホウキを持った少女。

◆解説
 時系列としては、PC1がお菓子の家に入って何日か後、PC1がそれなりにヘングレ兄妹に馴染んだ頃を想定している。
 グレーテルは、飢えた様子のない(自分と重ならない)PC2に当惑し、ヘンゼルと同じ種族であることで、「自分は妹なのにヘンゼルと違う」無意識下の不安を刺激され、凶暴性をあらわにする。

◆セリフ
▼グレーテル
「あなた、飢えているわけじゃないわね? なら、どうしてココに来たの?」
「……あなた、●●なところがヘンゼルに似ているわ」
「わかったわ。あなた、ヘンゼルを迎えに来たのね!」
「だめよ、だめだめ! ヘンゼルはわたしのヘンゼルなの! やっと帰ってきてくれたわたしのヘンゼル、誰にも渡さないんだから!!」

◆結末
 一方的に叫ぶと、少女は目にも止まらぬ速さでPC2をホウキで殴りつけた。
 ……目が覚めたとき、PC2は真っ暗な牢屋に入っていた。




ミドルフェイズ

●シーン1:お菓子の家  シーンプレイヤー:PC3〜5

◆描写
 森に入るとすぐに、ほのかな甘い香りがした。
 香りに導かれて森の奥へ奥へと歩き続けると、香りの強い場所をみつけた。
 と、時を同じくして、他の冒険者もその場に到着したようだ。

◆解説
 PC達が合流した時点で、自己紹介をしてもらう。PC1とPC2と合流したときもやるので、さらっとで構わない。
 甘い香りの元をその場で調べる → 小石を調べる → 結界を壊す → 菓子に触れる …の順で調べていく。
 その場を調べる:【感知】12。きらきら輝く石が東西南北に置かれている。どうやら、その小石が甘い香りの発生源のようだ。
 小石を調べる:【知力】12。魔法的な力を込め、何かを隠すために配置された小石。要するに結界。壊せば、隠された物がみつかるよ!
 結界を壊す:宣言で壊せる。PC4が調べたとおりの「お菓子の家」が現れる。先程までとは比べものにならない良い香りが広がる。空腹の人間ならば、何も考えずに菓子を食べようとしてしまうだろう。
 菓子に触れる:お菓子の家の「中」に転送される。PC1と合流。

◆結末
 お菓子の家の中は、修羅場だった。



●シーン2:ヘンゼルとグレーテル  シーンプレイヤー:PC1、PC3〜5

◆描写
 お菓子の家の中では、少女と少年が言い争っていた。(PC1の外見)が部屋のスミにいる。
「だって、だって、ヘンゼルがとられちゃうもの! ヘンゼルはわたしのお兄ちゃんなのに、あのこ、ヘンゼルとおなじだったから!」
「おれは、ここから出られない」
「でも、でも……! ヘンゼル、どうしておこってるの? あのこがしんぱいなの?」
「その娘も、(PC1)も、まだここから出られる。家に帰れる」
「……出られないわ! お菓子の家からは、だぁれも出られない! 帰るおうちなんて何処にもないもの! ヘンゼルの馬鹿ぁーー!!」
 こどものように大泣きしながら、少女はお菓子の山の向こうへ消えていく。
 残されたヘンゼルは、ぼんやりした表情で一行に向き直った。
「帰れ……(PC1)を連れて」

◆解説
 時系列はPC2のオープニング直後。
 ヘンゼルはPC1に「ボンボンはいくつ残ってる?」と問いかける。1D6振って、その出目の数だけボンボンは残っている。
 ヘンゼルはPC1を他PC達に託す。PC達の質問には答えるが、グレーテルが魔女に囚われており、自分達に帰る家がない状態では、「お菓子の家から出よう」と言われてもマトモに取り合おうとしない。

◆オリジナルアイテム「ヘンゼルボンボン」
 鑑定値:7。重量:1。
 メジャーアクションで使用すると、HPMPが2Dずつ回復する。
 ヘンゼルがくれた謎のアメ。悪いものではない。お菓子の家を食べたくなったときに代わりに食べられる。

◆オリジナルアイテム「グレーテルクーヘン」
 鑑定値:7。重量:1。
 メジャーアクションで使用すると、HPMPが4Dずつ回復するが、食べた者が次に行う判定の際に−1Dする。
 グレーテルのつくったクッキー。とても美味しいが、食べ続けると菓子のことしか考えられなくなって「帰り道」を忘れてしまう。

◆セリフ
▼ヘンゼル
「グレーテルはお菓子の家に囚われたから帰れない。おれはヘンゼルだから帰れない」
「毒菓子を食わせた子どもを魔女は食う。食われたくなければこちらへは来るな」
「お伽話を思い出せ。魔女の家から出る方法を思い出せ」
「グレーテルが泣いている。おれは行く。おれはヘンゼルだから」

◆結末
 話し終えたヘンゼルは、一瞬にして姿を消した。



●シーン3:お菓子の部屋  シーンプレイヤー:PC1、PC3〜5

◆描写
 お菓子の部屋には、お菓子の家具のほかにも、グレーテルがPC1のために作った菓子の山があった。何かを探そうにも、やけに美味しそうな菓子達が目に入って集中できそうにない。

◆解説
 PC1と他PCの情報共有を促す。PC2がどこにいるのかという話題になったら、「グレーテルが殴り飛ばして気絶させ、床をいじって地下階段を出現させて地下へ連れて行ったのをPC1が見た」と伝える。
 地下への扉や出口など、部屋を見回して何かを探そうとした場合は【精神】12の判定が必要。判定に失敗した場合は、部屋の菓子を食べることに夢中になってしまう。効果はグレーテルクーヘンと同じとする。菓子を食べなければならなくなったPCがヘンゼルボンボンを所持していれば、それを代わりに食べて耐えることもできる。
 地下への扉を発見:床に敷き詰められたジンジャーマンクッキーの中にひとつだけ、目の色の違うクッキーがある。触ると驚いて逃げ出し、つられて周囲のクッキー達も逃げ出してしまう。ぽっかりと地下への階段が現れた。 → シーン4へ。
 次への扉を発見:何故、今まで気づかなかったのだろう?木製の扉が部屋の奥にあった。 → シーン6へ。

◆結末
 次の部屋へ進もう。



●シーン4:地下牢(貯蔵庫)  シーンプレイヤー:PC2、他PC

◆描写1
 石階段の下は真っ暗で、少し肌寒い。人の気配はするような、しないような……?

◆解説1
 階段途中に、一段だけ、ぐらついている石段がある。踏んだ場合、トラップ「落とし穴」(基本ルールブックP.304)が発動。灯りで照らしていれば[トラップ探知]可能。

◆描写2
 階段下まで降りて灯りで照らせば、そこは貯蔵庫のようだった。小麦粉や色粉、菓子に使うのだろう食材が保管されている。
 貯蔵庫の奥、牢のようになっている鉄格子の向こうに、PC2の姿があった。
 牢屋には鍵がかかっている。

◆解説2
 地下は、元々、連れ込んだ子どもを保管しておくための牢屋。グレーテルがお菓子の家の整備人になった際、牢屋ではなく食材の貯蔵庫として活用することにした。他の部屋に続く扉は一切ない。
 PC達の誰も灯りを持っていない場合は、部屋の中は真っ暗で何も見えない。手探りでなんとか牢まで辿り着くこと、鍵の解除も可能ではある。
 牢屋の鍵はトラップ「鍵A」(基本ルールブックP.305)。灯りがない場合、トラップ解除達成値に−3する。
 牢屋の鍵が開いた後は、PC全員で情報共有してもらうこと。

◆結末
 地下には、他に扉はないようだ。階上へ戻ろう。



●シーン5:お菓子の兵隊さん

◆描写
 地下牢からPC2を救出してお菓子の部屋に戻ると、どこからともなく、砂糖菓子の鳥が飛んできた。
「キーヴィット! 魔女の許しなく牢から出たやつがいるよ! キーヴィット!!」
 砂糖菓子鳥の告げ口で、壁や床のジンジャーマンクッキー達がわらわらと起き出して襲いかかってくる。

◆解説
 ジンジャーマンクッキー×3〜6体を適正数出現。エネミーガイドP.99「クレイゴーレム」、分類は「お菓子」に変更し、レベルを1上昇させる。
 エネミーはPCから5〜10m位置に、2体1エンゲージで配置する。

◆結末
「キーヴィット……まじょが泣いてるよ……キーヴィット」
 砂糖菓子鳥は淋しげに鳴いて、溶けて消えた。



●シーン6:調理場

◆描写
 木製の扉を開けたその先は、打って変わって、ふつうの家のような部屋だった。
 石造りの床に同じく石の壁。調理用具の並ぶ作業台の横には大きな竈。棚には小物が色々と並んでいる。
 部屋の左と奥に、木製の扉が見える。

◆解説
 アイテム探索シーン。「●●を探索する」を宣言すれば、何か見つかる。扉を開けると次のシーンの描写(シーン7は同時並行可能だが、シーン8は同時処理を行うとややこしいため非推奨)。
 ラウンド管理を行い、「探索すればするほど時間が過ぎる」ことをPLに伝えておく。シーン6と7で合計何ラウンド使ったかによって、クライマックス戦闘の雑魚エネミーの数が変動する。
 探索場所は、以下の通り。
 調理台:「三徳包丁」(P.55)、「調理用具」(P.97)、「火打ち石」(P.99)
 :「囮餌」(P.97)、「火酒」(P.101)、「火打ち石」(P.99)
 :「グレーテルクーヘン×5」(シーン2のアイテム参照)
 左の扉を開ける:シーン7へ。
 奥の扉を開ける:開ける前に【感知】10で鴨の鳴き声が聞こえてくる。扉を開けた場合はシーン8へ。

◆結末
 ここはグレーテルの調理場だったらしい。では、次の部屋は?



●シーン7:兄妹のへや

◆描写
 左の扉を開けると、そこはやっぱり「ふつう」の部屋。広さはあるけれど天井の低い、庶民の私室。
 家具はベッドと本棚と鏡台くらいだが、部屋の隅には雑多に物が積み上げられている。
 綺麗に片付いているところもあれば放置されているところもあり、ちぐはぐな印象だ。

◆解説
 かつては魔女の寝室であり、今はヘングレ兄妹の私室。そのため、カーナミの私物とヘングレの私物が混ざっている。
 アイテムと情報探索シーン。ラウンド管理する旨は必ず伝える。探索に判定が必要となる可能性があることは、伝えても伝えなくても構わない。
 探索場所は以下の通り。
 本棚:新しい本の山(【知力】9):ドレスブック(P.99)
    古い本(【知力】11):魔女の日記帳(以下詳細)
    3回目の判定(達成値にかかわらず発見):奥に押し込まれた聖書(以下詳細)
 鏡台(判定なし):マジカルキー(P.99)、バーストルビー(P.99)
 雑多なもの(【幸運】9):鴨のホイッスルと手帳(以下詳細)、ポーションホルダー(P.95)、壊れた天使の人形(P.162)

◆魔女の日記帳
 偏食魔女★カーナミの美食日記(レシピダイアリー)。
 お菓子の家を作ったのは、飢えた人間を誘い込んで閉じ込め、毒菓子で邪悪化させて食べるため。
 魔族たるカーナミの魔力を込めた水で作られた毒菓子は、食べた者を邪悪化させる。 ※邪悪化については、【知力】もしくは【幸運】で判定しても構わない
 人を誘う → 毒菓子食わせる → 神の子邪悪化 → ペロリ。 の美食ライフを楽しんでいたら、あるとき、(グレーテルの種族)の兄妹が迷い込んだ。先に邪悪化したヘンゼルを食べたら、グレーテルはショックで絶望、カーナミの眷属化する。
 よい小間使いができたことに喜んだカーナミは、自分は「我が家の奥深く」に移住して、菓子作りはグレーテルに任せることにした。
 「この美食日記も我が眷属に下げ渡す」文章の後は、カーナミらしい文字はない。
 しばらくの空白ページを経て、幼い子どものような筆跡。「ヘンゼルがかえってきてくれた! これからはずっといっしょ!!」

◆奥に押し込まれた聖書
 基本ルールブックP.237に記載されている「邪悪化」についての情報。
 【幸運】12で、一度書いてから消された文字を発見。手帳と同じ筆跡。「帰るおうちが欲しいとあのこは泣いてる」

◆オリジナルアイテム「鴨のホイッスルと手帳」
鴨のホイッスル:重量1。アイテム鑑定値3。マイナーアクションを消費して吹くと鴨が寄ってきて言うことを聞く。
手帳
 10年以上前の古い日付。
 エルーラン王国のとあるヒーラーが、子どもが食べやすいよう、薬をボンボン型にすることに成功した。効き目は確かだが“アエマの巫女”に聖別してもらった水を使っているため、大量生産ができず高額になる。(そのぶん、保存も半永久的に可能)
 アエマ信仰の厚いクラン=ベルの富豪の娘(もしくは息子。要するにPC2のこと)は病弱で、両親は薬を求めているらしい。
『そこならば、多少高額でも買い取ってもらえるのではないか。
 途中で買い付けた鴨と、一吹きで鴨に命令できるホイッスルもオマケでつけよう。
 人食い魔女の昔話では、鴨の背に乗って子どもたちは魔女から逃げられたのだから。病弱なお子さんが病という魔女から逃げられるように祈りを込めよう。
 ……それにしても、前の街でサイフをすられたのが痛い。腹が減った』

◆結末
 大体の事情はわかった。次の部屋に向かおう。



●シーン8:忘却のレテ川

◆描写
 奥の扉を開けると、そこは川だった。
 岸辺では、大きく育った鴨が毛づくろいをしている。
 川の向こうはもやがかっていて、よく見えない。

◆解説
 お菓子の家最深部。川幅は10m程。川に入るともやが晴れて、花畑になっていることがわかる(GM判断で、ヘングレ兄妹が見えてもよい)。川そのものも花畑も、どこまでも続いている。
 川底ではカーナミが眠っており、「食われるべき人間が川に入ったら」目覚める。
 川の水はカーナミの魔力が染み込んでおり、長時間触れたり多量摂取すると邪悪化してしまう。
 鴨に乗って移動すれば、川の水には触れずにすむ。
 PCが川に入った場合、川が波打ち始める。3ラウンドが経過したら、カーナミが出現して、強制的にクライマックスシーンに移行する。

◆オリジナルアイテム「鴨」
 ヘンゼルが連れてきて育てた結果、ありえないレベルで巨大化した鴨。存在が無垢なため、水に触れても邪悪化しないというご都合設定。
 ホイッスルを吹いた人間を自分の背に乗せて運んでくれる。ホイッスルの吹き方にコツがいるため、「他人を乗せろ」の指示は理解できない。
 ホイッスルを吹かずにむりやり乗ることも可能。その場合は、【敏捷】13で鴨を捕まえて騎乗し、自分が行動する前に【幸運】10判定を行って鴨から振り落とされないかチェックが毎ラウンド必要となる。
 鴨騎乗時は[飛行]状態となり、移動力が無限大になる。

◆オリジナルトラップ「レテの川」
 [トラップ探知]12。
 明らかに邪悪な魔力の込められた水。川の水に触れているPCは、なんだかぼんやりして、大切なものを忘れそうになって精神的苦痛を受ける。
 自分が行動するイニシアチブプロセスに、MPを−1D点失う。

◆結末
 川はどこまでも続いている。 



●シーン9:お菓子の家の迷子達

◆描写
 川の向こうは、広大な花畑になっていた。ヘンゼルが妹のために花冠を編んで載せてやると、グレーテルは涙のあとの残る頬に笑みを浮かべた。
 君達に気付くと、グレーテルはホウキをにぎりしめて怯え、ヘンゼルは妹を背に庇って君達に対峙した。

◆解説
 ヘングレ兄妹が魔女の家から帰還できるかの分岐点となるシーン。
 魔女が目覚めてクライマックスシーンに移行するまで に、グレーテルが「かえりたい」と言えば、説得完了する。 ※クライマックス移行条件は「PCが川に入ってから、3ラウンド経過」。鴨に乗っていた場合に水底のカーナミが反応するかはGM裁量でよい。
 説得条件は、グレーテルに「ヘンゼルとグレーテルに帰るべき家を用意する」と約束すること。「神殿で保護してもらえばいい」「家がみつかるまで一緒に探してあげる」などでもギリギリ可としてもよい。
 ヘンゼルは主に「PC2」「グレーテルに好意的なPC」に対して態度が軟化する。逆に、「グレーテルに悪意を持っている・傷つけるPC」には態度が硬化する。
 グレーテルは主に「PC1」「ドレスブックをくれたPC」に対して態度が軟化する。逆に、「自分とヘンゼルを引き離そうとするPC」「ヘンゼルがヘンゼルでないと言うPC」には態度が硬化する。 ※グレーテルの精神安定と心の保護に「ヘンゼル」の存在は不可欠であるため、本シナリオでは、グレーテルに「ヘンゼルと呼んでいる男がグレーテルの本当の兄ではない」ことを自覚させることはほぼ不可能である。というか、そこ突っ込みだしたら主題がブレるのでオススメしない。

◆セリフ
▼ヘンゼル
「何をしにきた」 「川はどこまでも続いている。魔女の魔力が満ちているから。こちらにはなにもない」
(君はヘンゼルじゃない)「(神速でグレーテルの耳をふさいで唸る)おれはヘンゼル。そう生きると決めたから、おれはこのこのヘンゼルだ。……二度と言うな」
(PCが帰りたい)「帰り道を見つければいい。今は、ここからは出られない」
         「お伽話を思い出せ。魔女の家から飛び立てる生き物を思い出せ」
(鴨に乗れば帰れる?)「魔女の魔力が満ちている。このままでは惑わされて飛べない」
(魔女を倒して鴨に乗れば帰れる?)「……おまえたちは、帰れる」
(一緒に帰ろう)「帰れない。グレーテルが囚われているから。おれはグレーテルのヘンゼルだから」
(ヘンゼルだけでも帰ろう)「……おれはヘンゼル。グレーテルのヘンゼル」(態度が硬化する)
(魔女を倒せばいい?)「帰る家がない」
(グレーテルの説得が完了した)「……帰りたい。グレーテルと一緒なら、どこにだって行く」

◆セリフ
▼グレーテル
(彼はグレーテルの兄じゃない)「……なにいってるの? ヘンゼルはヘンゼルよ、だってわたしをひとりにしないっていったものかえってきてくれたものずっといっしょにいてくれるものヘンゼルがいないとさみしくてかなしくてつらくてだからだからだからヘンゼルはヘンゼルだもん!!!」(狂乱してヘンゼルにすがりつく、態度が硬化する)
(PCが帰りたい)「かえれないわ。お菓子の家からはだぁれも出られないもの!」
(鴨に乗れば帰れる?)「??? このこたちはヘンゼルのよ。ヘンゼルがつれてきてくれたの」
(魔女を倒せばいい?)「まじょさまにはだれも敵わないわ!」
(魔女を倒して鴨に乗れば帰れる?)「おばかさん。まじょさまには誰も敵わないもの、かえりみちなんてどこにもないわ!」
(一緒に帰ろう)「かえるおうちなんてどこにもないわ!!」
(グレーテルだけでも帰ろう)「……わたしからヘンゼルをとるの? ヘンゼルはわたしのヘンゼルなのに!!」(態度が硬化する)
(おうちをあげる)「……ほんとう?」
         「かえりたい。ヘンゼルといっしょに、かえりたいよう……!」

◆結末
 レテの川の水が、ざわめいた。




クライマックスフェイズ

●シーン1:暴食の魔女カーナミ

◆描写
「起きた……まじょさまが……レテの川でうるさくするから!」
 グレーテルが恐怖に満ちた悲鳴をあげる。
 川の水が赤く黒く染まってゆく。水色が深紅に染まり切ったとき、水中からひとりの美しい女が現れた。大きく胸のひらいた装束に身を包んだ、下半身に輝く鱗を持つ大蛇だ。
「おやまあ。忌々しい女神の気配に目覚めてみれば、ヒトの子ではないかえ。なんとも不味そうな気配だこと」
 ころころと優雅に嘲笑うカーナミの周囲から、口だけしかない醜悪なミミズも姿を現した。

◆解説
 カーナミ達と戦闘。
 ここで、ヘングレ兄妹の説得が完了しているかで、エネミーになるかどうかが分岐。説得完了していれば、ヘンゼルがグレーテルを抱き上げて調理場に逃走する。
 説得できていなかった場合は、グレーテルは怯えながらホウキを構える。グレーテルが敵対する限り、ヘンゼルもPC達の敵となる。グレーテルは「キキーモラ」(P.60)、ヘンゼルは「傭兵」(P.53)のステータスを使用する。グレーテルのみ、邪悪化の影響で分類が「妖魔」に変更されている。
 口だけミミズ「アクアワーム」(P.89)は、分類を〈水〉に変更し、シーン6と7でかけたラウンド数で変動する。最小値を1体として、2ラウンド毎に1体増やす。(例:合計3ラウンドかかっていたならば2体。5ラウンドならば3体)
 魔女カーナミは「アイニー」(P.128)×1。
 カーナミは人間を馬鹿にしているため、ゆったりと鱗を手入れしてから、参戦する。(ステップ系をすべて踏む)「どんどん鱗が艶を増している、時間がかかると強くなるらしい」旨を伝えてもよい。
 アクアワームはレテ川から出ることができず、カーナミは炎属性もしくはバーストルビーで攻撃してきたPCに対して激高する。
 部屋は暫定的に30m四方。レテ川中心を15m地点として、レテ川が10m、ヘングレ兄妹のいる花畑が5m、鴨のいる岸辺が5m。PC達はそれまでいた配置、カーナミはレテ川中心位置。後のエネミーは適当に。
 エネミーに共通して、「とどめをさす」は行わない。屍肉は美味しくない。

◆セリフ
▼魔女カーナミ
(グレーテルがその場にいる)「妾(わらわ)の寝所まで侵入させるとは、やれグレーテル、其方、何をしておったのかえ?」
(戦闘開始)「妾の魔力込めしこの川に沈めれば、ちいとは美味くなるであろ!」
(PCが勝利)「神の子が……妾を倒すかや……やれ忌々しや、アエマめが!」
▼ヘンゼル
(味方の場合)「グレーテルは任せてくれ。魔女を、頼む(グレーテルの手を引いて逃走)」
(敵の場合)「魔女を倒せ。それ以外に、帰る手段はない」
      「おれの妹に、手出しはさせない!」
(敵かつ戦闘不能時)「グレーテル、すまない……おれは“ヘンゼル”になりきれなかった……な……」
(敵かつグレーテル戦闘不能時)「許さない、よくもおれの妹を!!!」
▼グレーテル
(味方の場合)「(泣きながらヘンゼルに手を引かれて逃走)」
(敵の場合)「はい、まじょさま、わたし言うことききますいいこにします……!」
      「はやくたおれて! またヘンゼルがころされちゃうよおっ!!」
(敵かつ戦闘不能時)「……いたいよお、ヘンゼルぅ……」
(敵かつヘンゼル戦闘不能時)「ヘンゼル……いやよ、ひとりは、いや……!」

◆結末
エンディングは、  PC達が勝利し、ヘングレ兄妹も説得できていた場合はシーン1に、
 PC達が勝利したがヘングレ兄妹を説得できていなかった場合はシーン2に、
 PC達が敗北した場合はシーン3に分岐する。




エンディングフェイズ

●シーン1:光さすおうちへ

◆描写
 魔女が倒れると、主を失った川は氾濫を始める。みるみるうちに水位があがり、飲み込まれかけたとき、鴨達が集まってきた。
 鴨に乗ったヘンゼルが「ホイッスルを!」と叫ぶ。PCが高らかにホイッスルを吹き鳴らすと、鴨達は一行を背に乗せ、大きく羽ばたいた。

◆解説
 鴨のホイッスルを入手していなかった場合は、ヘンゼルが持ってきて吹いてくれる。

◆結末
 やけに大所帯になってしまったが、とりあえず、PC2の実家と神殿に報告に行こう。



●シーン2:新しい魔女

◆描写
 魔女が倒れると、主を失った川は氾濫を始める。みるみるうちに水位があがる。
 傷付いたヘンゼルは「ホイッスルを。君達は、かえれ」と微笑む。
 同じくぼろぼろのグレーテルは、カーナミの死体と崩壊するお菓子の家を不思議そうに観察したのち、無垢に笑った。
「だいじょうぶよヘンゼル! わたしたちずっとずっといっしょだもの、わたし、ずっとずっとヘンゼルのためにお菓子つくるから……!」

◆解説
 グレーテルの狂気は加速したまま、ヘングレ兄妹は外に出てしまう。グレーテルがどこか別の場所で次の魔女になることが示唆される。
 万一、鴨のホイッスルを入手していなかった場合は、ヘンゼルが持っていて吹いてくれる。

◆結末
 鴨に乗って外に出たあと、ヘンゼルとグレーテルの姿はなかった。PC2の実家と神殿に報告に行こう。



●シーン3:カーナミさまのごちそう

◆描写
 グレーテルの泣き声がする。ヘンゼルが呻く声がする。
 それよりも大きく響くのは……ごちそうを前にした魔女の舌なめずり。

◆解説
  基本的には容赦なくキャラロストするが、PLとGMが望むならば、「神殿の人達が助けてくれる」「他PCを作成して再度シナリオを遊び、とどめをさされる瞬間にPC達を救出する」などの救済措置をもうけても構わない。

◆結末
 君達が最後の晩餐に食べたのは、自らの血の味だった。



■アフタープレイ

 成長点表の“ミッションに成功した”欄は、エンディング1の場合は20点、エンディング2の場合は10点、エンディング3の場合は0点となる、
 他、「ヘンゼルボンボンの残数×2点」がプラスされ、「グレーテルクーヘンを食べた数×1点」がマイナスされる。
 ヘンゼルとグレーテルの処遇は、PC達に一任される。引き離すと病む。